ナチュラルでは、日々の施術の中で『一次呼吸』について患者さんにお話しすることがあります。今回は、その『一次呼吸』について説明していきます。

 

一次呼吸とは、頭蓋骨や体全体でみられる規則的な動きであり、これは肺呼吸ではなく、体が「開いたり閉じたり」、「伸びたり縮んだり」といったリズミカルで小さな動きです。脳と脊髄は髄膜という三層の膜状の袋で包まれており、この中には脳脊髄液という体液で満たされています。一次呼吸の動きはこの脳脊髄液を循環させる作用があるのです。

脳脊髄液には、打撃などの外傷を受けた場合、脳や脊髄を守る働きがあります。また、脳や脊髄に栄養を与え、発達を促すという大事な働きもあります。出産後からはじまる肺で行う呼吸を二次呼吸と呼び、これに対して、一次呼吸は出産前のお腹の中にいる頃からすでに始まっています。脳脊髄液が滞りなく流れることが、体の生命機能を高めることに繋がると言われています。

一次呼吸は1分間に約6~12回のサイクルのリズムがあり、触れることで体全体にその動きを感じることができます。この動きは脳脊髄液が増えたり減ったりすることで引き起こされていると考えられていますが、まだ、はっきりとした原因はわかっていません。

脳と脊髄を包む髄膜は、頭蓋骨から脊柱の一番下にある尾骨まで繋がっています。脊髄神経は脊柱から出ると末梢神経と名前が変わり、手や足に伸びていきます。そして髄膜の最外側にある硬膜は、神経上膜として脊髄神経から出てきた末梢神経を包み、全身に行き渡っています。この事から、髄膜内の脳脊髄液は全身に及んでいるとも言われています。

しりもちをついた後に急激な頭痛やめまいを経験するという方が見られますが、こうしたケースでは仙骨や尾骨に受けた外力が硬膜を通じて頭蓋に影響を及ぼしたとも言えます。

私たちが過去に経験した身体的、精神的外傷は、体の持つ自己調整、治癒、健康を維持する力を低下させたり、制限することがあります。過去に経験した外傷とは、出産、成長、病気、怪我、事故、手術、精神的なトラウマなどがあり、このような外傷は身体に炎症を引き起こしてしまいます。外傷を受けた場合、生体の恒常性(ホメオスタシス)の働きにより、自らの治癒力をもって体を整えるように働きかけます。しかし、外傷の程度が大きい場合には、体を整えきれず、また、外傷後に起こる炎症は癒着を作ってしまうため、一次呼吸の動きは乱れ、生命力や体液の流れを低下させてしまいます。このような状態が長期化する事は体が病的な変化を起こすきっかけになるのです。

一次呼吸に対する施術は「頭蓋仙骨療法」、「クラニオ・セイクラル・セラピー」などと言われており、これらの施術は、主に頭蓋骨と脊柱に行われ治癒力を高めると言われています。しかし、硬膜を中心とした一次呼吸の動きは体全体に行き渡っているため、手や足などの体の端に生じた癒着でも一次呼吸を乱す原因になる場合があります。我々は頭蓋や脊柱以外にも上肢や下肢また内臓、血管、神経なども含め体全体を調整することで治癒力、免疫力の改善を図っていきます。

一次呼吸のリズムをよりバランスの取れた状態へ整えることで、自律神経系、中枢神経系、運動器系に作用し、自己調整力、自己治癒力、免疫抵抗力を高めます。体が内面から整い、維持されることで、より一層、健康を維持し、体の不調や病気から体自身で守るようになるのです。